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「幻のコットン」 復活に尽力した日本人
こんにちは!
ベリージュコンシェルジュ インターン生の清水です。
今回は最高級コットン『海島綿』を栽培されている、日本人経営者の方の綿花農場への訪問記をお届けします。
私は以前今治タオルの1つのメーカーで1年、インターンとして働いていました。この会社はビジネスを通して生産地である開発途上国に貢献していた側面があったのですが、私は生産地を訪問した機会はありませんでした。そのため、そもそもどのように綿花は栽培されているのか?開発という面ではどのような影響があるか?等、知りたい!と思う点が沢山あり、実はこれがきっかけでベリーズコンシェルジュでインターンをさせていただくことになりました。
タオルメーカーでインターンをしていた時
まず、『海島綿』とは?
カリブ海の限られた地域でしか栽培することができないと言われている最高級品種。西印度諸島が英国領だった16世紀末から『海島綿』の栽培が盛んになったそう。その際には英国王室に献上され、エリザベス1世が大変気に入ったと言われています。
『海島綿』の中でもV-135は綿花の頂点と言われる品質で、品質の高さを表す繊維長は40mm前後になるそう。(通常は平均22〜28mm) V-135は1903年に開発されましたが、病気になりやすく収穫量も少ないため生産者は減り、商業生産は半世紀前に終わってしまいました。
西印度諸島海島綿協会、及び、日本経済新聞2017年3月12日(第47074号)10頁より引用
綿花農場はベリーズシティから北へ100kmのオレンジウォークにあり、西印度諸島海島綿協会のベリーズ現地法人代表の井上堅介さんが14年も前から栽培されています。堅介さんが初めてベリーズに訪れたのは1972年。当時はUNDP(国連開発計画)のエンジニアとして現地の人々に技術を教えられていたそうです。
「ベリーズの自然の美しさに恋してしまった」と堅介さん。農業の経験は全く無かったものの、半世紀前に途絶えてしまった海島綿V-135の栽培を始めることになったのです。
綿花農場はどんなに遠くを見てもずっと農場!というくらい広大です。白くて丸っとしたコットンボールがついた木々は青空の下でなんだか可愛らしく見えました。
コットンボールは近くで見るとこんな感じ。慣れていないと一つ取るのにも少し時間がかかってしまいました。
こちらはコットンの花!薄い黄色で可愛い〜。
今はちょうど収穫の時期(ベリーズでは11〜3月)で、周辺に住む50人もの人たちが収穫しているそうです。女性の方が比較的手先の器用な方が多いようで、私が訪れた際も大半は女性でした。
ベリーズシティに比べ、この辺りでは、教育を受けていない人(読み書きができない人)が就ける職は限られており、更に綿花摘みの仕事は11〜3月はホリデーシーズンのため、お金が必要な時期の嬉しいアルバイトとして地域に根ざしているとのこと。オレンジウォークの雇用機会の創出に貢献されているのだなと感じました。
(15歳以上のベリーズ人の識字率は2015年時点で82.8%。*1 読み書きのできない人たちはサインをする時、丸の中にある「十字」のサインをするそう。)
*1 knoema
また、大半の方が10年以上続けて働かれているそうです。
その一つの理由は、自分自身の都合に合わせて働くことができるから。「毎日来る人もいれば、週1日だけの人もいます。1時間で帰る人もいれば毎日の収穫最長時間の5時間働く人もいます」と堅介さん。こうした働き方ができるのは、オレンジウォークでここだけだそうです。
ここは綿花を乾燥させる場所。コットンは光に当てることで中から油が出て、光沢感が増すそうです。
突然大雨が降るベリーズの天候に対応するために、堅介さんは一瞬で雨カバーができる屋根を考案されたそう!
細くて長〜いコットンが最高級の証。触ってみると予想以上になめらかでびっくり!
見学後には美味しい日本食までご馳走になってしまいました。留学先ではなかなか食べることのできない久しぶりの日本食、とっても美味しかった〜。
(奥様手作りのロールケーキ。ほっぺたが落ちました)
日本から遠く離れたカリブ海の国ベリーズで始められた海島綿栽培。苦労された中で作られた海島綿は、ふんわり軽いわずか一つのコットンボールでも無駄にしたくない…!と感じるほど重みがありました。
堅介さんは「ベリーズ開発に大きく貢献しているとは思いません。」と謙遜されていましたが、「小学校を出ていないから働けない」「小さな子供がいてフルタイムで働けない」「字が書けないから働けない」といった人々が現金収入を得られるというのは大きなプラスです。
また、国際的な知名度が比較的低いベリーズが『海島綿』というブランドコットンを生産できるのは、マクロな視点でプラスと言えるでしょう。
そういう意味で、堅介さんがされているビジネスの影響は大きいと私は感じました。
すごく勉強になりました!堅介さんありがとうございました。はるばるベリーズまで来て良かったあ〜!!
農園の見学に興味のある方は是非ご連絡ください!
(これ乗ってごらん!写真撮ってあげるから、と堅介さん。運転するフリをしています)
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